ウイルス学:MFSD6はエンテロウイルスD68の侵入受容体である
Nature 641, 8065 doi: 10.1038/s41586-025-08908-0
世界的なワクチン接種キャンペーンによってポリオウイルスがほぼ根絶されたことで、ポリオ様麻痺症候群(現在は急性弛緩性脊髄炎と呼ばれる)を引き起こす可能性のある他のエンテロウイルスへ関心が移った。特に、エンテロウイルスD68(EV-D68)は、近年の急性弛緩性脊髄炎のエピデミック性アウトブレイクを引き起こした主因子だと考えられているが、EV-D68と宿主の相互作用についてはあまり分かっていない。EV-D68は呼吸器系ウイルスだが、まれな症例では、中枢神経系へと広がって重度の神経障害を生じることがある。今回我々は、ゲノム規模のCRISPRスクリーニングを用いて、特性がほとんど分かっていない複数回膜貫通トランスポーターMFSD6が、EV-D68の宿主侵入因子であることを明らかにした。MFSD6の発現をノックアウトすると、呼吸器細胞や神経細胞に相当する細胞株や初代細胞でEV-D68感染が阻害された。MFSD6は形質膜に局在し、宿主細胞へのウイルス侵入に必要であった。MFSD6はその3番目の細胞外ループ(L3)を介してEV-D68粒子へ直接結合することが分かった。我々は、MFSD6 L3と複合体を形成しているEV-D68のクライオ電子顕微鏡構造を決定し、その相互作用する境界面を明らかにした。MFSD6 L3をFcへ融合させて作製したデコイ受容体は、ヒト初代肺上皮細胞のEV-D68感染を阻害し、EV-D68感染の致死マウスモデルでほぼ完全な防御をもたらした。まとめると我々の結果は、MFSD6がEV-D68の侵入受容体であることを明らかにするとともに、MFSD6の標的化が、パンデミック(世界的大流行)を起こす可能性を持つこの新興病原体の感染に対抗する有望な機構であることを裏付けている。

