分子生物学:DNAが誘導する転写因子相互作用はヒトの遺伝子調節コードを拡張する
Nature 641, 8065 doi: 10.1038/s41586-025-08844-z
転移RNAのmRNAとの結合の特異性が遺伝暗号を決定するのと同じように、転写因子(TF)のDNAとの結合特異性は遺伝子調節コードの分子基盤となっている。特にTFは1600以上もあって互いに相互作用するのが一般的なので、ヒトの遺伝子調節コードは、遺伝コードよりもはるかに複雑である。細胞の運命を特定し、細胞型特異的な転写プログラムを実行するにはTF–TF相互作用が必要である。それにもかかわらず、DNAに結合したTF間の相互作用の状況は、ほとんど解明されていない。今回我々は、CAP-SELEXという方法を使って、DNAに結合したTFの間の生化学的相互作用をマッピングした。この方法では、個々のTF同士の結合の際の優先傾向、TF–TF相互作用、相互作用する複合体が結合するDNA配列を同時に確認できる。5万8000を超えるTF–TF対をスクリーニングして、相互作用する2198のTF対を確認したところ、そのうちの1329は、独特な間隔と方向性の両方、あるいはその一方によって配置されたモチーフに優先的に結合していることが分かった。また、個々のTFモチーフとは著しく異なっているTF–TF混成モチーフが1131個発見された。これらを合算すると、このスクリーニングによって突き止められたTF–TFモチーフは、ヒトの全てのTF–TFモチーフの約18~47%であると考えられる。我々が発見した新規な混成モチーフは、細胞型特異的要素に多く含まれ、in vivoで活性であり、発生の際に同時に発現されるTF間に形成される傾向が強い。さらに、胚の軸を決めるTFはさまざまなTFと相互作用して異なるモチーフに結合するのが一般的で、同じような特異性を持つTFが、発生軸に沿って異なる型の細胞を定義付けする仕組みが、これで説明できる。

