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神経科学:肥満において食の快楽価値の低下を導くニューロテンシンシグナル伝達の変化
Nature 641, 8065 doi: 10.1038/s41586-025-08748-y
カロリー豊富な食品、特に脂肪や糖に富む食品は、ヒトにも動物にも快楽をもたらす。しかし、そうした食物の長期摂取は、快楽価値を低下させる場合があり、肥満につながる可能性がある。今回我々は、高脂肪食(HFD)を長期摂取させたマウスで、この現象を検討した。これらのマウスは、その飼育ケージ内では通常食よりもHFDを好んだが、自由摂食状況にすると高カロリー食への興味が減退した。この逆説的な快楽的摂食の低下はこれまでにも報告があるが、その神経生物学的基盤は不明である。我々は、通常食のマウスでは、外側側坐核(NAcLat)から腹側被蓋野(VTA)に投射するニューロンが、快楽をもたらす摂食行動を符号化していることを見いだした。HFDマウスでは、この行動が減少し、神経活動から脱共役していた。NAcLat→VTA経路を光遺伝学的に刺激すると、通常食マウスでは快楽的摂食が増えたが、HFDマウスではそれが起きなかった。しかしHFDマウスを通常食に戻すと、この行動は復活した。HFDマウスでは、NAcLat→VTA経路でのニューロテンシンの発現と放出の低下が見られた。また、NAcLatでのニューロテンシンのノックアウトとVTAのニューロテンシン受容体の阻害はそれぞれ、光遺伝学的に誘発した快楽的摂食行動を消失させた。ニューテンシンシグナル伝達を過剰発現によって増強すると、体重増加や快楽的摂食など、食餌誘発性肥満の諸状況が正常化した。まとめると今回の知見は、快楽的摂食の価値低下と肥満を結び付ける神経回路機構を明らかにしている。

