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原子物理学:CERNの反物質ファクトリーからの陽子輸送
Nature 641, 8064 doi: 10.1038/s41586-025-08926-y
低エネルギー反陽子を使用した精密測定は、CERNの反物質ファクトリー(AMF)でのみ実現可能なものであり、素粒子物理学の標準模型における基本的対称性であるCPT(荷電共役変換–パリティ変換–時間反転)不変性の厳密な検証を可能にする。こうした検証は、例えば反陽子ヘリウムや反水素で実現されてきた。我々の極低温ペニングトラップ実験は、陽子と反陽子の磁気モーメントと電荷質量比を測定し、現在ではバリオンセクターにおけるCPT不変性の最も精密な検証となっている。我々の実験は、AMF内の減速器からくる磁場ゆらぎによって制限されているので、反陽子の専用精密実験室への運搬を進めている。今回我々は、反陽子を他の実験に分配することのできる、輸送可能で超伝導、自律型、そして開放型のペニングトラップ系であるBASE-STEPを使用して、トラップされた陽子雲をAMFから輸送するのに成功したことを報告する。我々は、トラップされた陽子をAMFの実験エリアから移してトラックに載せ、CERNのメラン(Meyrin)サイトの端から端まで輸送し、外部電源なしに4時間の自律的稼働と、損失のない陽子の運搬を実現した。これにより、AMF近くの低雑音実験室に粒子を移送したり、トラックに搭載された発電機を使うことでヨーロッパ各地の実験室まで届けたりするのが可能であることを確認した。これは、反陽子、帯電した反物質イオンであるH+やH2−、さらに加速器で生成された他のイオン、例えば水素様の鉛イオンやウランイオンの低雑音測定を可能にし、精密反物質研究における新時代の幕開けとなる可能性がある。

