神経科学:感覚皮質では潜在的な知識が速やかに現れて学習を促す
Nature 641, 8064 doi: 10.1038/s41586-025-08730-8
生態学的環境の中で、速い学習は動物に大きな優位性を与える。そうした速さの必要性にもかかわらず、動物は報酬を得る行為と予測的な合図の関連付けをゆっくりとしか学習しないようである。このような遅い学習は、感覚皮質での合図の表現が徐々に変化することによって支えられていると考えられてきた。しかし、従来のパフォーマンス指標が示唆するよりも、動物は速く学習することを示す証拠が増えつつあり、感覚皮質可塑性の主流的モデルに疑問が投げ掛けられている。今回我々は、学習と感覚皮質表現の関係について調べた。我々は、速やかな課題随伴性の獲得(学習)と、そのより遅い表現(パフォーマンス)とを分けるゴー・ノーゴー聴覚課題でマウスを訓練した。光遺伝学的な抑制により、聴覚皮質は速い学習と遅いパフォーマンスの向上の両者を促すが、マウスがパフォーマンスに「熟達」すると皮質は不要になることが実証された。学習の全期間にわたって聴覚皮質ニューロンの2光子カルシウム画像化を行ったところ、合図の表現が強化されるのではなく、学習とパフォーマンスの原因として2つの高次信号があることが分かった。1つ目は報酬予測信号で、数十回の試行中に速やかに生じ、訓練初期に行為に関連した錯誤の後に見られるが、熟達したマウスでは減弱した。報酬予測信号が生じた時点でこれを抑制すると速い学習が阻害されることから、この信号は連合的な役割を持つと考えられる。2つ目はそれとは別の細胞アンサンブルによる舐めの抑制の符号化と制御で、遅いパフォーマンスの改善を促した。これらのアンサンブルは空間的にクラスター化しているが、感覚表現とは共役しておらず、聴覚皮質内で高次の機能的分離が生じていることを示している。今回の結果は、感覚皮質は、速い学習と遅いパフォーマンス改善を別々に促す高次の演算を行っていることを明らかにしたもので、感覚皮質の基本的役割の理解を改めるものである。

