神経回路:自然行動はドーパミンを介した強化によって学習される
Nature 641, 8063 doi: 10.1038/s41586-025-08729-1
発話や移動運動を含め、自然な運動技能の多くは、発育期にわたり試行錯誤学習という過程を経て獲得される。人工学習実験における観察に触発されて、この学習過程にはドーパミンが重要な役割を果たすという仮説が以前から立てられてきた。大脳基底核のドーパミンは、報酬が予測より少なかった時に減少して予測より多かった時に増加する形で報酬予測誤差を符号化することによって、報酬ベースの試行錯誤学習を導くと考えられている。キンカチョウの成鳥での我々の以前の研究(聴覚フィードバックをゆがめることで、知覚されるさえずりの質を変えた)では、さえずりに関係する基底核の領野Xのドーパミンが、パフォーマンスの予測誤差を符号化していることが示されている。すなわち、パフォーマンスが予測より悪い(音節に乱れがある)とドーパミンは抑制され、予測より良い(音節に乱れがない)と活性化する。しかし、発育中の発声学習などの自然行動の学習も、ドーパミンベースの強化を介して起きているのかは分かっていない。今回我々は、キンカチョウの幼鳥のさえずり学習の経過を追跡し、ファイバーフォトメトリーを用いて領野Xで同時に起こるドーパミン活性を監視した。その結果、発した音節が最近のものに比べて最終目標である成鳥のさえずりに近かった時にはドーパミンが活性化し、遠かった時には抑制されることが分かった。また、ドーパミンとさえずりの揺らぎとの関係から、ドーパミンがその後のさえずりの上達を予測していることが示され、ドーパミンによる行動の駆動が示唆された。さらに、ドーパミンの活性は、現在のさえずりの質と最近のさえずり履歴との比較によって説明でき、これは行為者–評価者型強化学習モデルでの予測誤差の符号化におけるドーパミンの仮定的役割と合致する。強化学習アルゴリズムは、実験課題での報酬ベースの学習を説明する強力なモデルとして、また人工知能の自律学習を促すモデルとして登場している。今回の結果は、生物系の複雑な自然行動も、ドーパミンを介する強化学習によって獲得され得ることを示唆している。

