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気候科学:極端気候への前例のない生涯曝露の世界的発生
Nature 641, 8062 doi: 10.1038/s41586-025-08907-1
人為起源の気候変動の下で極端気候が激化しつつある。しかし、これが、人間の一生涯における極端事象への前例のない累積的曝露にどのようにつながるのか、いまだ明らかになっていない。今回我々は、気候モデル、影響モデル、人口統計データを用いて、人々が生涯に経験する極端気候事象への累積的曝露について、産業革命以前の気候において予想される曝露の99.99パーセンタイルを超える人の数を予測した。その結果、熱波、作物の不作、河川洪水、干ばつ、山火事、熱帯低気圧に対する前例のない生涯曝露に直面している出生コホートの割合は、2100年までに産業革命以前の気温より2.7 ℃上回る地球温暖化経路に沿った現在の緩和政策の下では、1960年から2020年までに少なくとも倍増すると見積もられた。1.5 ℃経路の下では、2020年に生まれた人の52%が熱波への前例のない生涯曝露を経験することになる。地球温暖化が2100年までに3.5 ℃に達すると、この割合は熱波については92%、作物の不作については29%、河川の洪水については14%に上昇する。熱波への前例のない生涯曝露に直面する可能性は、高い社会経済的脆弱性を特徴とする人口集団で大幅に高い。今回の結果は、現在の若年世代にかかる気候変動の負担を減らすために、大幅かつ持続的な温室効果ガス排出削減を求めるものである。

