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冶金学:水素ベースの還元によって可能になる持続可能なニッケル

Nature 641, 8062 doi: 10.1038/s41586-025-08901-7

ニッケルは、持続可能なエネルギーシステムへと移行する上で重要な元素であり、その需要は2040年までに年間600万トンを超えると予想され、これは主に輸送部門の電化によって駆動されている。一次ニッケルの生産では酸と炭素系還元剤が用いられ、ニッケル生産量1トン当たり約20トンの二酸化炭素が排出されている。今回我々は、化石燃料を使わない水素プラズマによる還元を用いて、ラテライトとして知られる低品位鉱石種からニッケルを抽出する方法を提示する。我々は、従来の多段階プロセスを回避し、煆焼、製錬、還元、精錬を、1つの炉で実施する1段階の冶金プロセスに統合した。この手法では、高還元反応速度で高品位フェロニッケル合金が製造される。炉の雰囲気の熱力学的制御によって、選択的なニッケル還元が可能になり、最小限の不純物しか含まない合金(ケイ素0.04 wt%未満、リン約0.01 wt%、カルシウム0.09 wt%未満)が得られ、さらなる精錬は不要である。今回提案した方法は、現行の方法と比較して二酸化炭素の直接排出を最大84%削減する一方、エネルギー効率を最大約18%向上させる可能性がある。このように我々の研究結果は、持続可能なエネルギー技術におけるニッケルの有効利用とその生産による環境への害との間の非両立性を解消するのに役立つ持続可能な手法を示している。

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