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神経科学:ストレスはニューロンのオートファジーを動的に調整してうつ病の発症をゲーティングする
Nature 641, 8062 doi: 10.1038/s41586-025-08807-4
慢性的なストレスは脳の恒常性を改変し、この変化の持続はうつ病性障害につながる。脳の恒常性の主要な調節因子として、脳でのオートファジーがストレス動態に関わっているかどうか、関わっているならどのようにかは、まだはっきりしていない。今回我々は、主に外側手綱核(LHb)でのオートファジーが、急性ストレスで活性化し、逆に慢性ストレスで抑圧されることを見いだした。複数種の抗うつ薬の全身投与によってLHbのオートファジー機能が同等に回復し、これはLHbのオートファジーが抗うつ薬の共通の標的であることを示唆している。LHbニューロンのオートファジーを遺伝的に除去するとストレス感受性が亢進したのに対し、LHbオートファジーを増強すると急速な抗うつ薬類似効果が表れた。LHbオートファジーは、ニューロンの興奮性と、シナプスの伝達や可塑性を、グルタミン酸受容体のオンデマンド分解によって制御している。まとめると本研究は、ストレスに対する情動的恒常性の維持におけるLHbオートファジーの因果的な役割を示している。LHbオートファジーの破綻は、慢性ストレスへの不適応と関連付けられており、オートファジーのエンハンサーによるその回復は、新たな抗うつ戦略となるだろう。

