心血管疾患:CYSLTR2とP2RY6によるセラミドの感知はアテローム性動脈硬化を悪化させる
Nature 641, 8062 doi: 10.1038/s41586-025-08792-8
最近の証拠によれば、循環血中の長鎖セラミドレベルの増加が、コレステロールとは無関係にアテローム性動脈硬化性心血管疾患を予測することが示されている。セラミドシグナル伝達を標的化することで、高コレステロール血症の治療以上の治療効果を得られる可能性があるが、循環血中セラミドがアテローム性動脈硬化性心血管疾患を悪化させる根本的な機構はまだ明らかにされていない。本研究で我々は、循環血中の長鎖セラミドが膜のGタンパク質共役受容体を活性化し、アテローム性動脈硬化を悪化させるかどうかを調べた。我々は、Gタンパク質シグナル伝達の定量化、Gタンパク質共役受容体の発現に関するバイオインフォマティクス解析、NLRP3インフラマソーム活性化の機能的な検討を組み合わせた体系的なスクリーニングを行った。その結果、CYSLTR2とP2RY6が、内皮細胞とマクロファージの両方において、C16:0セラミドによって誘導されるインフラマソーム活性化を仲介する内在性受容体である可能性が示唆された。CYSLTR2とP2RY6を遺伝学的あるいは薬理学的に阻害すると、セラミドによるアテローム性動脈硬化の悪化が軽減された。さらにセラミドレベルの増加は、さまざまな程度の腎障害を持つ患者で冠動脈疾患の重症度と相関していた。またマウスで、CYSLTR2およびP2RY6を欠損させると、コレステロールやセラミドレベルに影響を及ぼすことなく、慢性腎疾患によるアテローム性動脈硬化の悪化が軽減された。セラミド–CYSLTR2–Gq複合体の構造解析によって、C16:0およびC20:0セラミドの両方がCYSLTR2上の傾斜チャネル様リガンド結合ポケット内に結合することが明らかとなった。さらに、セラミドによって誘導されるCYSLTR2の活性化やそのCYSLTR2–Gq境界面の根底にある非従来型の機構を明らかにした。まとめると我々の研究は、長鎖セラミドが、CYSLTR2受容体やP2RY6受容体への直接結合を介して膜貫通型Gqやインフラマソームシグナル伝達を開始させる仕組みの構造機構と分子機構を示している。従って、これらのシグナルの阻害は、アテローム性動脈硬化に関連する疾患を治療するための新たな治療法になり得る。

