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構造生物学:縮合サイクル中でのヒト脂肪酸合成酵素の構造動力学的性質

Nature 641, 8062 doi: 10.1038/s41586-025-08782-w

長鎖脂肪酸は人体の脂肪の構成要素である。哺乳類では、脂肪酸合成酵素(FASN)は多酵素ドメインを含んでいて、これらがde novo脂肪酸合成に必要な全ての化学反応を触媒する。これらの酵素ドメインにより行われる化学反応は十分に明らかにされているが、開いた構造をとった二量体FASNが完全な構造を持つ脂肪酸を合成する反応を連続的に触媒する仕組みはよく分かっていない。今回我々は、HEK293T細胞で内因性のFASNをタグ付けして精製し、単粒子クライオ電視顕微鏡法を用いて調べることにより、内因性ヒトFASNの構造動力学的性質の特性を明らかにした。さらに、縮合サイクル中でのさまざまな機能準安定状態のコンホメーションのスナップショットを捕捉し、その縮合ウィングと修飾ウイング間でさまざまな方向をとっているFASNの粒子分布地形を解析する手法を開発した。まとめると、我々の知見により、FASN機能は縮合サイクルの間は2つの主な機能ドメイン間での大きな回転運動は必要としないこと、また縮合サイクル中に2つの単量体により実行される触媒反応が同期していないことが明らかになった。従って、我々のデータからは脂肪酸合成縮合サイクルの間のFASNの動態について新たな混成描像が提供される。

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