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生態学:人類が生物多様性に及ぼしている地球規模の影響
Nature 641, 8062 doi: 10.1038/s41586-025-08752-2
人間活動は、生息地の変化、汚染、気候変動といった多様な環境圧を引き起こし、その結果として生物多様性にかつてない影響をもたらしている。しかし、数十年にわたる研究にもかかわらず、人類が生物多様性に及ぼす影響の規模や範囲は、いまだ明確に一般化されていない。地域スケールの生物多様性の推移に関する見解はさまざまで、空間全体での生物多様性の生物的均一化に関してはさらに意見が分かれている。今回我々は、影響を受けている場所と基準となる場所の計9万7783カ所を網羅する2133報の文献を収集し、全ての主要な生物群、生息地、極めて重大な5つの人為的圧力にわたる生物多様性への影響の、3667件の独立した比較からなる前例のないデータセットを構築した。全ての比較について、生物多様性の主要な3指標を定量化し、これらの人為的圧力が、空間全体の生物群集の均一化や組成変化、そして地域スケールの多様性の変化をそれぞれどのように駆動しているか評価した。その結果、人為的圧力は、陸上、淡水、海洋の各生態系において明確に群集組成を変化させ、地域スケールの多様性を低下させていることが示された。一方、長年の予想とは異なり、群集の明確な全般的均一化は認められなかった。重要なのは、圧力の種類、生物群、研究のスケールによって、生物多様性の変化の方向性と規模が異なっていた点である。我々の徹底した全球的分析によって、人為的圧力が生物多様性に及ぼしている全般的な影響およびその重要な媒介因子が明らかになり、これは保全戦略のベンチマークとなり得る。

