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免疫学:調節された体細胞高頻度変異による抗体親和性成熟の増強
Nature 641, 8062 doi: 10.1038/s41586-025-08728-2
胚中心は、B細胞が親和性成熟を行う特殊化した微小環境である。体細胞高頻度変異によって親和性が高まった抗体を発現するB細胞は、限られた数の濾胞性ヘルパーT細胞によって選ばれて増殖する。細胞分裂に伴って免疫グロブリン遺伝子の変異が起こり、その変異率は一定で、1回の細胞分裂につき1塩基対当たり約1 × 10−3だと考えられている。変異誘発はランダムであるため、有害な変異を獲得する確率は、親和性を増強する変異を獲得する確率を上回る。高親和性抗体を発現し、最も多く細胞分裂するB細胞では、この効果が高まり、逆効果になることもあり得る。今回我々は、高親和性の抗体を発現する細胞ほど多く分裂するが分裂ごとに起きる変異は少なくなるように体細胞高頻度変異の割合を変えることで、親和性成熟がどのように最適化され得るかを説明する理論モデルを実験的に調べた。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)ワクチンやモデル抗原で免疫したマウスから得られたデータは、この理論モデルと合致し、高親和性抗体を産生する細胞は細胞周期のG0/G1期を短縮して、それらの変異率を低下させることを示している。これらの機構は高親和性B細胞系列を保護し、抗体の親和性成熟の効率を高めると考えられる。

