神経回路:行動の固執・探索・中止の状態間を切り替える皮質下の交換機
Nature 641, 8061 doi: 10.1038/s41586-025-08672-1
動物は、資源が不確かな動的環境の中で生き延びるために、現在の選択肢への固執、別の選択肢の探索、あるいは行動自体の中止などの戦略を選びながら、行動を柔軟に適応させなくてはならない。これまでの研究では主に、前頭領域が、そうした意思決定の際に選択肢のコストと価値、そして最良の戦略をどのように表現しているかが検討されてきた。しかし、脳が、固執・探索・中止といった別個の行動戦略を実行する神経機構はほとんど分かっていない。今回我々は、異なる行動戦略間の柔軟な切り替えに極めて重要な神経系のハブとして、正中縫線核(MRN)を特定した。多様な本能的行動および学習行動を実行中のマウスで、細胞タイプ特異的な光遺伝学的操作、ファイバーフォトメトリー法、回路追跡を用いることで、MRNの主要な細胞タイプ、すなわちGABA作動性(γ-アミノ酪酸発現)、グルタミン酸作動性(VGluT2+)、セロトニン作動性のニューロンが、相互補完的な機能を持ち、それぞれ固執・探索・中止を調整していることが見いだされた。例えば、MRNのGABA作動性ニューロンを、MRNに強い正の価値を伝える外側視床下部からの抑制性入力を通して抑制すると、固執行動につながった。対照的に、MRNのVGluT2+ニューロンの活性化は探索を駆動した。また、MRNのセロトニン作動性ニューロンの活動は、一般的な課題の遂行に必要だった。負の価値を伝える外側手綱核からの入力は、MRNのセロトニン作動性ニューロンを抑制して行動の中止につながった。これらの知見は、MRNが、行動戦略を柔軟に制御するよう独特に配置された行動の交換機であることを確立している。従って、これらの回路は、うつ病性障害や強迫性障害などの主要な精神病態の病因として重要な役割を担っている可能性もある。

