Article

がん:上皮間葉転換における進化の指紋

Nature 640, 8060 doi: 10.1038/s41586-025-08671-2

間葉の可塑性は、進行上皮がんで広く報告されているが、悪性化に果たすその機能的役割については議論が分かれている。上皮間葉転換(EMT)と細胞の可塑性が腫瘍の不均質性とクローン進化にどのように機能するかは、ほとんど解明されていない。今回我々は、EMTが膵臓がんの悪性化に果たす役割を明らかにする。我々はまず、体細胞モザイクゲノム編集技術を用いて、EMT連続体で悪性の間葉系細胞系譜を追跡して除去した。この実験的証拠によって、間葉系細胞系譜が膵臓がんの進化に不可欠な寄与をしていることが明らかになった。EMTの空間的ゲノム解析、単一細胞のトランスクリプトームとエピゲノムのプロファイリングによって、EMTが染色体粉砕イベントを含めたゲノム不安定性の出現に寄与していることが明らかになった。間葉系細胞系譜を遺伝的に除去すると、このような変異過程と進化パターンが確実に起こらなくなり、これは、膵臓がんをはじめとするヒト固形腫瘍の異種間解析によって確かめられた。我々は、作用機構として、間葉系細胞系譜の特徴を持つ悪性細胞ではクロマチンアクセシビリティーが高くなっていて、特にセントロメア領域とセントロメア周辺領域でそれが著しく、その結果、有糸分裂が遅れて壊滅的な細胞分裂に至ることを突き止めた。従って、EMTはゲノムが不安定で高度に適応度の高い腫瘍細胞の出現を有利にしており、それが細胞状態に制約された進化パターン、つまり、がん細胞の特殊化が制約された機能的区画内で子孫に受け継がれていくという概念を強く裏付けている。間葉系細胞系譜の可塑性を可能にするクローンの除去を通して進化の経路を制約し、派生した細胞系譜を死滅させれば、ヒトがんの中でも最もアグレッシブな形態の1つが悪性化する可能性を食い止められるだろう。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度