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腫瘍免疫学:アスピリンは血小板TXA2によるT細胞免疫抑制を制限することで転移を防ぐ
Nature 640, 8060 doi: 10.1038/s41586-025-08626-7
転移は、原発腫瘍から遠隔器官へのがん細胞の拡散であり、世界のがんによる死亡の90%の原因である。転移中のがん細胞は最初、確立された腫瘍内に見られるような免疫抑制性の微小環境を欠くため、免疫による攻撃に対して特に脆弱である。そのため、この免疫への脆弱性を治療に利用して、転移リスクのある早期がん患者で再発を防ぐことに関心が集まっている。今回我々は、アスピリンなどのシクロオキシゲナーゼ1(COX-1)阻害剤が、血小板由来のトロンボキサンA2(TXA2)によるT細胞抑制を解除して、がんの転移に対する免疫を高めることを示す。TXA2はT細胞に作用して、グアニン交換因子ARHGEF1依存的に免疫抑制経路を開始させ、これによってT細胞受容体が駆動するキナーゼシグナル伝達、増殖、エフェクター機能が抑制される。マウスにおいてT細胞特異的にArhgef1の条件付き欠失を行うと、転移部位でT細胞の活性化が増強され、これによって肺転移や肝転移について免疫が仲介する拒絶が引き起こされた。従って、in vivoでアスピリン、選択的COX-1阻害剤あるいは血小板特異的なCOX-1欠失を用いてTXA2の利用可能性を制限すると、T細胞固有のARHGEF1発現やTXA2によるシグナル伝達依存的に転移率が低下した。これらの知見は、T細胞免疫を制限してがんを転移させる新規免疫抑制経路を明らかにしており、これによりアスピリンの抗転移活性についての機構的手掛かりが得られ、より効果的な抗転移免疫療法への道が開かれる。

