細胞生物学:SMC複合体の広範な相互作用が3Dゲノムの折りたたみの形を決める
Nature 640, 8058 doi: 10.1038/s41586-025-08638-3
哺乳類のゲノムは、クロマチンループを突出させるコヒーシン(突出コヒーシン)、姉妹染色分体結束コヒーシン(結束コヒーシン)、分裂期染色体関連コンデンシンといった染色体構造維持(SMC)複合体の異なる作用によって折りたたまれている。これらの複合体は細胞周期の別々の段階で機能するが、G2からM期への移行の際にはこれらの複合体はクロマチン上で共存し、この間にゲノム構造の大幅な再構築が行われる。しかし、これらの異なったSMC複合体が互いにどのように影響し合うのか、またその相互作用がどのようにして三次元のゲノムの動的な折りたたみを調整するのかは、まだ解明されていない。今回我々は、分裂期染色体上でコヒーシンとコンデンシンが取り得る全ての立体構造を作出し、SMC複合体の協調の取れた相互に影響し合う作用を詳しく解析した。まず、コンデンシンがCCCTC結合因子(CTCF)部位で突出コヒーシンの結合を破壊し、それによって、有糸分裂が進行する際の間期トポロジカルドメイン(TAD)とループの解体を促進することが明らかになった。逆に、突出コヒーシンは、コンデンシンが仲介して起こる分裂期染色体のらせん形成を阻害する。コンデンシンは結束コヒーシンのピークを減少させるが、結束コヒーシンは、コンデンシンを介した分裂期染色体の長さ短縮に対抗する。突出コヒーシンと結束コヒーシンの両方が存在すると、これらの作用に相乗効果が見られ、分裂期染色体の凝縮が阻害される。突出コヒーシンは結束コヒーシンをCTCF結合部位に配置する。しかし結束コヒーシンは単独ではCTCF分子によって捕捉されず、TADもしくはループの形成を確立するには単独では不十分である。また、結束コヒーシンはループを突出させる作用は持たないことから、結束コヒーシンの機能は突出コヒーシンと重複していないことが示唆された。さらに、結束コヒーシンは突出コヒーシンが引き起こすクロマチンループの拡大を制限する。これらのデータをまとめることにより、細胞周期の進行の間にクロマチン構造の動的変化を引き起こす主要なSMC複合体の間に、三要因の交互作用(three-way interaction)があることが明らかになった。

