遺伝学:フェージング済みパンゲノムを利用したハイブリッドジャガイモのハプロタイプ設計
Nature 640, 8058 doi: 10.1038/s41586-024-08476-9
栽培ジャガイモ(Solanum tuberosum L.)は、四倍体ゲノムと栄養繁殖のために、最も重要な塊茎作物としては育種の進み方が遅く非累積的なものとなっている。ジャガイモの育種を二倍体近交系に基づく種子繁殖型の交雑方式に移行させることは、ジャガイモの改良を大幅に加速させる可能性がある。重大なことに、近交系の開発は多数の有害なバリアントによって妨げられており、そうしたバリアントの本質を明らかにしてそれらを除去する方法を見いだすことが、現在のハイブリッドジャガイモ研究の焦点となっている。しかし、既報の二倍体ジャガイモゲノムの大半はフェージングが行われておらず、ハプロタイプの多様性やヘテロ接合性に関する重要な情報が得られていない。本研究で我々は、ジャガイモの栽培二倍体および野生祖先種から得られた60例のハプロタイプについて、フェージング済みパンゲノムグラフを構築し、構造バリアントの生成に転位性遺伝因子が広く関わっていることを示す証拠を見いだした。このグラフパンゲノムは、線形参照配列と比べてより広範な多様性を表している(3076 Mb対742 Mb)。とりわけ、栽培二倍体では野生種と比べてヘテロ接合性が高くなっていることが分かり(14.0%対9.5%)、これはジャガイモ栽培化の過程における広範な交雑を示している。我々は、控えめな基準を用いて、有害と推定される構造バリアント(dSV)を1万9625個特定し、有害な一塩基多型(dSNP)が相引(coupling)相のdSVの周辺に偏って蓄積していることを明らかにした。我々は、このグラフパンゲノムに基づいて、dSNPとdSVを最小限に抑えた理想的なジャガイモのハプロタイプを計算設計した。こうした進展は、栄養繁殖のゲノム基盤に関する重要な知見をもたらすものであり、育種家による有望な近交系群の開発を導くと考えられる。

