比較ゲノミクス:ナス属のパンジェネティクスで明らかになった、作物改良における不確定要素としてのパラログ
Nature 640, 8057 doi: 10.1038/s41586-025-08619-6
パンゲノミクスとゲノム編集技術は、世界の作物育種を一変させている。大きな変革の機会は、主要な作物(世界的に栽培されている作物)と在来作物(特定の地域で局地的に栽培されている作物)の間で遺伝子型と表現型の関係に関する知識を交換して食料システムを強化することでもたらされる。しかし、種特異的な遺伝的バリアント、ならびにそれらと望ましい自然突然変異や人工的変異との相互作用が、近縁作物間においても、予測可能な表現型効果の実現に対する障壁となっている。本研究で我々は、多くの作物が含まれるナス属(Solanum)のパンゲノムを構築して機能ゲノミクスとパンジェネティクスを組み合わせることで、遺伝子重複およびその後のパラログの多様化が、遺伝子型と表現型の関係の予測可能性に対する大きな障害となっていることを示す。13種の在来作物を含む22種において、染色体規模の参照ゲノム間では遺伝子のマクロシンテニーが広く保存されているが、数千に及ぶ遺伝子重複、特に主要な栽培化遺伝子ファミリー内のものに関しては、塩基配列、発現、機能に動的な変遷が認められた。我々は、このパンゲノムをアフリカのナス栽培品種で増強し、定量遺伝学とゲノム編集を用いることで、果実のサイズに影響を与えるパラログ進化の複雑な歴史を明らかにした。古典的な果実サイズ調節因子CLAVATA3 (CLV3)の重複するパラログの喪失は、系統特異的なタンデム重複によって補われたことが分かった。そして、その後の派生コピーの偽遺伝子化と、それに続く栽培品種特異的な大規模欠失によって、果実器官数を調節する単一の融合型CLV3対立遺伝子が、同じ形質を制御する酵素遺伝子と共に生じた。我々の知見は、短期間でのパラログの多様化が、形質の進化可能性における、これまで十分に調べられてこなかった不確定要素であることを示している。遺伝子型と表現型の関係を種間で相互に適用可能にするには、そうした不確定要素を見つけ出して適切に処理することが極めて重要である。

