Perspective
気候科学:もう1つの気候危機
Nature 639, 8056 doi: 10.1038/s41586-025-08680-1
地球が温暖化するにつれて、地域的な気候シグナルが蓄積されている。いくつかのシグナル、例えば、海洋より陸域がより温暖化することや北極が最も温暖化することは、予期されていたもので、実際予測に成功している。こうした成功の根底にあるのは、大きな空間スケールと小さな空間スケールは十分に分離されているという仮定の下に物理法則を適用したことであった。これによって、いわゆる標準的手法である、気候科学の支配的パラダイムが確立された。しかし、温暖化がさらに進む中、実世界のシグナルとこの標準的手法に基づく予想の間の差異は、特に地域的スケールで蓄積している。同時に、破壊的な計算的手法が新たなパラダイムを進展させてもいる。科学哲学者たちは、差異(異常)と破壊の蓄積が支配的パラダイムの不信につながる状況を、「危機」と見なしている。本論文で我々は、支配的パラダイムと考えられている標準的手法と、近年顕在化した差異と破壊について明示する。我々はまた、危機とされているものの政策への影響と、危機であるかないかにかかわらず今後進むべき道についても検討する。こうした道には、シグナルを用いた、地球の温暖化を駆動する過程と仮説の初めての検証、検証可能な仮説の開発、気候システムの構成要素と空間スケールにわたって存在する空白を埋めることによる概念的思考の再活性化が含まれる。

