分子生物学:マラリア原虫の血液段階の発生にはクロマチンリモデリング因子Snf2Lが必要である
Nature 639, 8056 doi: 10.1038/s41586-025-08595-x
熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の生活環は複雑で、重要な分化段階が複数存在し、そのそれぞれに遺伝子発現の厳密な制御が必要である。クロマチン構造とエピジェネティック修飾が、生活環の進行に伴って抜本的に変化することから、これらの機構がマラリア原虫の発生の転写プログラムの調節に中心的な役割を果たしていることが示唆される。熱帯熱マラリア原虫のクロマチンは他の真核生物のクロマチンとは異なり、AT含有量が顕著に高く(80%以上)、ヒストンが大きく分岐しており、その結果としてDNAが非定型的なパッケージング特性を持つ。その上、クロマチン構造の形成に不可欠なクロマチンリモデリング因子が、熱帯熱マラリア原虫ではよく保存されておらず、詳しい研究もされていない。今回我々は、熱帯熱マラリア原虫のSnf2L(PfSnf2L、PF3D7_1104200にコードされる)がISWI関連ATPアーゼであることを突き止め、in vitroで熱帯熱マラリア原虫のヌクレオソームの再配置を活発に行うことを明らかにした。これらの結果は、PfSnf2Lが非常に重要で、無性生殖と有性生殖の両方を調節していることを示している。PfSnf2Lは、段階特異的遺伝子のプロモーターでのヌクレオソームの配置を時間的空間的に決めることにより、転写がちょうど良いタイミングで起こるように全般的に制御している。PfSnf2Lの独特な塩基配列と機能特性によって、熱帯熱マラリア原虫を特異的に殺せる阻害剤が突き止められ、遺伝子発現の正しいタイミングが失われる表現型の模写につながった。この阻害剤は、生殖母細胞形成を阻害してマラリア感染を阻止する新しいタイプの抗マラリア薬となるだろう。

