生化学:メタゲノムの「暗黒物質」酵素はセルロースの酸化的変換を触媒する
Nature 639, 8056 doi: 10.1038/s41586-024-08553-z
セルロースの分解は自然界で起こる最も重要な反応の1つであり、バイオマスの燃料や化学物質への変換の中心となっている。しかし、セルロースは微小繊維で構成され、植物細胞壁の他の成分と複雑に相互作用していることが、酵素による変換をする上での重大な難問となっている。今回我々は、リグノセルロース分解に特化した微生物群のメタゲノム中の「暗黒物質」(機能の分からない未分類DNA)を大量に調べることにより、セルロースを酸化的に分解する金属酵素を発見した。この金属酵素はセルロースのC1位置選択的にエキソ型機構で作用し、その結果、産物としてセロビオン酸だけを生じる。結晶構造から、触媒作用を持つ銅が小さくまとまったゼリーロール型の骨格に埋め込まれ、平たくなったセルロース結合部位がそこの特徴となっていることが分かった。この金属酵素はホモ二量体構造をとっていて、その立体配置により、一方のサブユニットによってin situで過酸化水素を生成でき、もう一方のサブユニットは生産的にセルロースと相互作用できることが分かった。この金属酵素を発現するように遺伝子操作した菌類Trichoderma reesei株のセクレトームが、工業的に利用できる条件下で前処理したリグノセルロース性バイオマスからのグルコース放出を促進させることが示され、その生物工学的利用の可能性が実証された。この発見によって、バイオマスの利用抵抗性克服を専門に行う細菌の酸化還元酵素系に関するこれまでの理解が改められた。またこの発見は、農業・工業残渣を付加価値のあるバイオ製品に生まれ変わらせるものであり、持続可能なバイオベース経済への移行に役立つだろう。

