Article

神経回路:嗅内皮質–海馬の空間地図における左右交互のシータ波スイープ

Nature 639, 8056 doi: 10.1038/s41586-024-08527-1

海馬の場所細胞と嗅内皮質のグリッド細胞は、自分の位置の神経地図の基本要素である。これらの細胞がナビゲーションに役立つには、それらの神経表現が周囲の諸地点に動的に関係付けられていなくてはならない。場所細胞については、動物の経路に沿って場所を結び付ける機構の候補が報告されており、それは、海馬のシータ振動の各サイクルのスパイクシーケンスが、動物の現在地点から次の地点へ向かう軌道を符号化しているというものである。二分岐迷路では、動物がどちらかを選ぶ点に近づくと、この経路符号は2つの枝を交互に行き来する。このことから、その軌道符号が過去の試行の際に符号化した利用可能な前方経路を表現している可能性が浮上する。しかし、過去に行った場所や次に行く場所を超えて、動物の経路をより広い環境につなぐには、経験に依存しない空間サンプリングの機構が必要になるかもしれない。今回我々は、自由移動中のラットにおいて、個々のシータ波サイクルではグリッド細胞と場所細胞の集団が動物の現在地点から周囲環境に向かって線状に外向きスイープする位置信号を符号化し、そのスイープの方向は連続するシータ波サイクルで左右交互に定型的に変化することを示す。これらのスイープは、傍海馬台の別の細胞集団が示す同様な左右交互の方向信号に随伴・並列しており、グリッドと方向の両方の情報を処理する細胞を介してグリッド細胞と結合していると推定される。さらにスイープは、動物には到達不可能な、過去に行ったことのない地点にまで及んでおり、REM睡眠中にも継続していることが分かった。こうしたスイープの方向は、周囲の多様体空間を累積的にカバーするのを最適化するアルゴリズムで説明できる。嗅内皮質–海馬位置決定系におけるシータ波パターンの左右交互スイープの継続的・無条件的な表現は、既経験の経路を超えた地点までサンプリングするための効率的な「見回し」機構を提供している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度