ゲノミクス:グリーンランドにおける遺伝的構造は人口動態と遺伝的微細構造と自然選択によって形作られた
Nature 639, 8054 doi: 10.1038/s41586-024-08516-4
グリーンランドのイヌイットをはじめとする先住民集団は、遺伝学研究では十分に代表されておらず、これが医療機会における不公平につながっている。我々はこの問題に取り組むべく、広範な表現型を持つグリーンランド人5996人について、ゲノムの塩基配列解読またはインピューテーションを行い、それらを解析した。そして、これらの人々の歴史的な集団ボトルネックと、それがどのようにグリーンランド人の遺伝的構造を形作り、数は少ないがよりありふれた置換部位を生じたのかを定量化した。その結果、グリーンランドでは、代謝形質との影響の大きなゲノム規模関連がヨーロッパの2倍多く見られることが分かった。この影響の大きなバリアントは、グリーンランド人がアメリカ先住民から分岐した後に生じた、従って北極域に特異的なものと推定され、その一部が広く見られるのは、遺伝的浮動だけでなく自然選択も働いたためであることが示された。また、代謝形質に関するヨーロッパ人由来の多遺伝子スコアの正確さは、グリーンランド人ではヨーロッパ人の半分にとどまるが、北極域特異的なバリアントを加えると総合的な正確さがヨーロッパ人と同レベルまで高まることも分かった。同様に、公開されている遺伝子データベースでの代表性の不足は、グリーンランドのイヌイットの臨床での遺伝子スクリーニングをより困難なものにしているが、グリーンランド人のデータを含めると、非因果的な候補バリアントの数が6分の1に減少してこの問題は緩和された。さらに、グリーンランドにおける単一遺伝子疾患の罹患率の差異を説明し、移動性における最近の変化と共に特定の劣性(潜性)遺伝病のリスクの予測される将来的な低減につながる、顕著な遺伝的微細構造が突き止められた。以上の結果は、グリーンランド人のデータを含めることによって、ゲノムに基づく医療の不公平がいかに大きく緩和され得るかを示している。

