ゲノム工学:1個の終止コドンでゲノム暗号を書き換えた生物を作出する
Nature 639, 8054 doi: 10.1038/s41586-024-08501-x
遺伝暗号は生命の全てのドメインにわたって保存されているが、コドンの指定するアミノ酸や関連する翻訳因子に違いがある場合も例外として明らかになっている。このような天然の可変性がヒントとなって、合成生物学的手法によって全ゲノムを同義コドンで置換して、ゲノム全体を別の遺伝暗号で書き換えた生物(GRO)を作製できることは実証されている。しかし、翻訳因子の可塑性とコドンの縮重とを十分に活用して、翻訳機能を1個のコドンに圧縮し、縮重のない遺伝暗号の可能性を評価する試みはこれまで行われていなかった。今回我々は、翻訳機能を1個のコドンに完全に圧縮したGROであるOchreを作製し、その性質を詳しく調べた。我々はまず、ΔTAG大腸菌(Escherichia coli)C321.ΔAの1195個のTGA終止コドンを同義コドンTAAに置き換えた。次に、終結因子2(RF2)とtRNATrpを操作して、本来のUGA認識を抑制し、非縮重機能用に4個のコドンを通常の翻訳機構から切り離した。つまりOchreは、UAAを唯一の終止コドンとして使用し、UGGはトリプトファンをコードしていて、UAGとUGAは複数の部位への2種類の異なる非標準的アミノ酸の取り込みを指示するように書き換えられており、1個のタンパク質に99%を超える精度で取り込みが行われる。Ochreは、縮重した複数の終止コドンを単一のコドンに完全に圧縮しており、64個のコドンによる非縮重暗号に向けた重要な一歩となっている。この非縮重暗号ができれば、天然とは異なる化学的性質を持ち、生物工学や生物学的医薬品の分野で幅広く利用可能な、複数の機能を持つ合成タンパク質を正確に作製することができるだろう。

