神経科学:柔軟な意思決定の基盤にある神経演算の個体差
Nature 639, 8054 doi: 10.1038/s41586-024-08433-6
外部刺激への応答を文脈的な情報に従って柔軟に変えることができる能力は、複雑な世界とうまく相互作用するために極めて重要である。文脈依存的な演算は多くの領域で必要とされるが、神経でどのように実行されているかはよく分かっていない。今回我々は、ラットにおける新たな行動課題を開発し、文脈依存的な選択と意思決定のための証拠収集について調べた。サルとラットのデータで裏付けられた仮定の下で、我々はまず、この演算が3つの動的な解によって支持され得ること、課題の実行に関わる全てのネットワークがこれらの解の組み合わせを実装していることを数学的に示す。これらの解は、実験データから直接特定することも検証することもできる。我々はさらに、既存の電気生理学データとモデル化データが、これらの解のあり得る組み合わせの全てと整合性があることを示し、これは、個体によって異なる組み合わせが用いられている可能性を示唆している。個体間の多様性を調べるため、我々の課題に対してラットを訓練するための自動的かつハイスループットの方法を開発し、この方法で多数の個体を訓練した。理論的な予測に合致して、神経活動と行動の解析結果からは、これらのラットが一貫して良好な課題成績を挙げていながらも、ラット間には大きな不均一性が見られることが分かった。我々の理論ではさらに、行動シグネチャーと神経シグネチャーの間に特異的な関連性が予想され、これも実際のデータによってロバストに裏付けられた。まとめると我々の結果は、柔軟な意思決定課題を実行している生体システムおよび人工システムにおいて個体差を解析するための実験的に裏付けられた理論的枠組みを示しており、より高次な認知での個体差の細胞分解能の研究の扉を開くとともに、より一般的な文脈依存的演算の神経機構についての手掛かりをもたらしている。

