計算生物学:moscotによる時間と空間を通じた細胞マッピング
Nature 638, 8052 doi: 10.1038/s41586-024-08453-2
単一細胞ゲノム技術により、時間的次元および空間的次元にわたって数百万の細胞についてのマルチモーダルプロファイリングが可能になった。しかし、実験的な限界により、細胞を、本来の時間動態下や生来の空間組織ニッチにおいて包括的に測定することが妨げられている。最適輸送は、これらの制約に対処するための強力なツールとして登場し、元の細胞状況への復元を促している。しかし、最適輸送の適用の多くは、マルチモーダル情報の統合も、単一細胞アトラスへの拡張も行うことができない。今回我々は、マルチオミクス単一細胞最適輸送(moscot)を紹介する。これは、単一細胞ゲノミクスにおける最適輸送のスケーラブルなフレームワークで、全ての適用においてマルチモダリティーを支援する。moscotは、マウス胚の 20の時点にわたる170万の細胞の発生軌跡を効率的に再構築する能力を持つことが実証された。我々は、moscotの空間的能力を示すために、マウス肝臓試料の単一細胞プロファイルから得たマルチモーダル情報をマッピングすることで空間トランスクリプトームデータセットを拡充し、マウス脳の複数の冠状切片のアラインメントを行った。我々はさらに、空間的次元と時間的次元の両方にわたって遺伝子発現データを活用し、マウス胚形成の時空間動態を明らかにする手法であるmoscot.spatiotemporalを提示する。加えて我々は、遺伝子発現とクロマチンアクセシビリティーの測定値を対として用いて、これまで未発表のマウス時間分解膵臓発生データセットにおいてデルタ細胞とイプシロン細胞の内分泌細胞系譜関係も解明した。我々の知見は、ヒト誘導多能性幹細胞の膵島細胞分化モデルにおいて、NEUROD2がイプシロン前駆細胞の調節因子であることが実験的に検証されたことにより確認された。moscotはオープンソースソフトウエアとして利用可能であり、詳細な取扱説明書が添付されている。

