天体物理学:超大質量ブラックホールの最内縁軌道付近におけるミリヘルツ振動
Nature 638, 8050 doi: 10.1038/s41586-024-08385-x
時間領域探査による最近の発見により、超大質量ブラックホール(SMBH)に物質が降着する仕組みについての我々の予想が覆されている。最近発見された準周期的な爆発など、SMBHの周囲で短い時間スケールで反復する事象が増加していることから、SMBHを軌道運動する恒星質量の伴星や、ミリヘルツ周波数の重力波事象の前駆天体へのさらなる関心が集まっている。本論文で我々は、2018年に始まった主に可視光、紫外線およびX線のアウトバーストを経て活発に降着を受けているSMBHである1ES 1927+654に、非常に顕著なミリヘルツの準周期的振動(QPO)を発見したことを報告する。このQPOは2022年におよそ18分の周期で検出され、これは、重力半径の10倍未満のスケールにおけるコヒーレントな運動に対応しており、典型的な準周期的爆発現象よりもSMBHにずっと近い。その周期は2年間で7.1分まで減少し、周期の変化は減速している(P¨ > 0)。我々の知る限り、このような変化は、SMBHのQPOあるいは恒星質量ブラックホールの高周波数QPOでは観測されたことがない。恒星質量の伴星の軌道減衰を仮定したモデルでは、角運動量の損失を相殺する安定な質量輸送がなければ、こうした周期変化を説明することが困難であり、また、恒星質量ブラックホールのQPOの直接的な類似天体の欠如は、多くの不安定性モデルでは1ES 1927+654におけるQPOの観測された性質の全てを説明できないことを意味している。将来のX線観測はこれらのモデルを検証することになり、観測対象が恒星質量を持つ伴星であれば、レーザー干渉計宇宙アンテナ(LISA)がその低周波数の重力波放射を検出するはずである。

