植物科学:植物免疫における希少なPRIMER細胞状態
Nature 638, 8049 doi: 10.1038/s41586-024-08383-z
植物には特殊化した可動性の免疫細胞が存在しない。そのため、どのタイプの細胞も病原体に遭遇すると免疫応答を開始し、防御を成し遂げるために周囲の細胞とコミュニケーションを取る必要がある。しかし、病原体が感染した植物における免疫の活性化に伴う細胞状態の変化については、多様性、空間的構成、機能がほとんど解明されていない。今回我々は、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の葉に免疫応答を活性化あるいは抑制する病原菌を感染させて、時間分解された単一細胞トランスクリプトーム、単一細胞エピゲノムおよび空間トランスクリプトームの解析から得たデータを統合し、細胞状態を特定した。この解析により、抵抗性や罹病性に関連する遺伝子のシスエレメントと転写因子の細胞状態特異的な組み合わせが見つかった。また、免疫活性化状態にある組織の中心に出現する希少な細胞集団を発見し、PRIMER(primary immune responder)細胞と名付けた。PRIMER細胞は通常とは異なる免疫応答特性を示す。例えば、これまで機能未知であった転写因子GT-3Aが発現し、それがゲノムへとアクセスしやすい状態になっている。我々は、GT-3Aが病原菌に対する植物免疫に寄与することも示した。PRIMER細胞は、細胞から細胞への長距離免疫シグナル伝達のための遺伝子群を発現する別の状態の細胞(bystander細胞)に囲まれている。まとめると、これらの異なる状態にある細胞間の相互作用が、葉全体に免疫応答を伝播することが示唆された。我々が分子レベルで特徴付けた単一細胞時空間アトラスは、植物免疫における細胞状態の機能および調節機構を解明する手掛かりになる。

