代謝:宿主代謝は微生物による胆汁酸シグナル伝達調節のバランスを取る
Nature 638, 8049 doi: 10.1038/s41586-024-08379-9
胆汁酸(BA)をはじめとする腸内微生物相由来の代謝物は、発達、代謝、免疫応答、認知機能など脊椎動物の生理機能を広範囲に調節している。しかし、微生物相由来代謝物の生理学的影響のバランスを、宿主応答がどの程度取っているのかは不明である。今回我々は、マウス組織でノンターゲットメタボロミクス解析を行い、腸内に豊富に存在し、バニン1(VNN1、腸組織で高発現するパンテテイナーゼ)依存的な胆汁酸–メチルシステアミン(BA–MCY)抱合体のファミリーを特定した。この宿主依存的なMCY抱合体は、肝胆道系で胆汁酸機能を逆転させる。微生物相由来の遊離胆汁酸は、ファルネソイドX受容体(FXR)のアゴニストとして機能して、胆汁酸産生を負に調節するのに対し、BA–MCYはFXRの強力なアンタゴニストとして働いて、in vivoで胆汁酸生合成遺伝子の発現を促進する。安定同位体標識したBA–MCYを補給するとFXR依存的に胆汁酸産生が増加し、また、高コレステロール血症のマウスモデルへのBA–MCYの補給で肝臓の脂質蓄積が減少した。これは、BA–MCYが腸のFXRアンタゴニストとして働くことと一致する。微生物相を欠損させたマウスではBA–MCYレベルが低下し、ヒトの糞便微生物相の移植により回復した。イヌリン繊維による食餌介入では、遊離胆汁酸とBA–MCYの両方のレベルがさらに増加したことから、宿主によるBA–MCY産生は微生物相由来の遊離胆汁酸レベルによって調節されることが明らかになった。さらに、ヒト血清中にはさまざまなBA–MCYが存在することも分かった。以上のことから、宿主によるBA–MCY抱合が、FXR依存的生理機能を調節する宿主依存的代謝経路と微生物相依存的代謝経路のバランスを取っていることが示された。

