神経科学:空間トランスクリプトーム時計から脳の老化における細胞の近接影響が明らかになる
Nature 638, 8049 doi: 10.1038/s41586-024-08334-8
高齢になるに従って、認知機能が低下し、神経変性疾患リスクが上昇する。脳の老化は複雑で、多くの細胞変化を伴う。さらに、老化した細胞が隣接細胞に及ぼす影響や、これが組織の衰えにどのように関与するかは分かっていない。より一般的に言えば、老化組織においてこの疑問に系統的に取り組むためのツールはいまだ開発されていない。今回我々は、マウスで、成体の全期間にわたる20の異なる月齢と、運動と部分的な再プログラム化という2つの若返り介入を行った場合について、合わせて420万の細胞の空間分解された単一細胞トランスクリプトミクス脳アトラスを作製した。そして、この空間トランスクリプトミクスアトラスで訓練された機械学習モデルである空間的老化時計を構築し、希少なタイプの細胞を含む、老化、若返り、疾患の空間的および細胞タイプ特異的なトランスクリプトームフィンガープリントを特定した。我々は、空間的老化時計と深層学習を用いて、加齢とともに脳への浸潤が増すT細胞が、隣接細胞に対し老化を促進する顕著な近接影響を及ぼすことを見いだした。意外にも、神経幹細胞は、隣接細胞に若返りを促進する強力な近接影響を及ぼす。我々はまた、隣接細胞に対する、T細胞の老化を促進する影響や神経幹細胞の若返りを促進する影響の有望なメディエーターも特定した。これらの結果は、希少なタイプの細胞が隣接細胞に強力な影響を及ぼしており、標的化により組織の老化に対抗できる可能性を示唆している。空間的老化時計は、空間的な状況において細胞間相互作用を研究するための有用なツールであり、これによって老化と疾患に対する介入の有効性をスケーラブルに評価できると考えられる。

