細胞生物学:哺乳類の運動性繊毛に見られる軸糸の構造的多様性
Nature 637, 8048 doi: 10.1038/s41586-024-08337-5
生殖、発生、恒常性は運動性繊毛の働きに依存しており、運動性繊毛のリズミカルな動きの原動力は、微小管で構成される軸糸と呼ばれる分子装置である。藻類のコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardtii)では軸糸の原子モデルが得られているが、哺乳類の軸糸構造については不完全である。さらに、体内の運動性繊毛を持つ異なる細胞タイプによって軸糸の分子構造がどのように違うかも、よく分かっていない。今回我々は、クライオ電子顕微鏡法、クライオ電子断層撮影法およびプロテオミクスを用いて、精子の鞭毛と、卵管や脳室、気道の上皮繊毛の両方を調べ、軸糸二連微小管(DMT)の96 nmモジュール性反復構造を決定した。その結果、精子DMTが最も特殊化しており、上皮繊毛については組織による違いはごくわずかであることが分かった。我々は、哺乳類の精子DMTのモデルを構築し、新たに見つかった34種類のタンパク質を含む181種類のタンパク質について、位置と相互作用を明確にした。我々はまた、ラジアルスポーク3の構成要素を調べ、ATP再生と繊毛運動性の調節に関連するキナーゼ結合部位を明らかにした。加えて、軸糸につなぎ止められた精子特異的なシャペロンTRiC(T-complex protein ring complex)が発見され、これは、哺乳類の精子に見られる長い鞭毛の構築あるいは維持に関わっている可能性がある。我々はさらに、動作前の状態にある軸糸ダイニンを調べ、繊毛が動く間に起こるコンホメーション変化を明らかにした。これらの結果は、化学的調節と機械的調節の要素が軸糸内部にどのように組み込まれているかを明らかにしており、これによって、繊毛関連疾患や不妊症の病因を理解する上で重要な研究資源がもたらされるとともに、現代構造生物学の探索力が例証された。

