ウイルス学:実験的に感染させた仔牛と雌牛におけるインフルエンザH5N1クレード2.3.4.4bウイルスの動態
Nature 637, 8047 doi: 10.1038/s41586-024-08063-y
2024年3月、米国テキサス州の乳牛で高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)H5N1のクレード2.3.4.4b感染が報告された。その後、このウイルスは14の州の380を超える酪農場に急速に広がった。今回我々は、クレード2.3.4.4bについて行った2つの独立した実験的感染研究の結果を示す。1つは、仔牛を対象にした、US H5N1ウシ分離株である遺伝子型B3.13(H5N1 B3.13)への口腔鼻腔感受性とその伝播を評価した研究で、もう1つは、泌乳牛に対して、H5N1 B3.13あるいは現在のEU H5N1野鳥分離株である遺伝子型euDG(H5N1 euDG)を乳腺に直接接種した際の感受性を評価した研究である。仔牛への接種の結果、鼻腔での中程度の複製および排出が見られたが、重度の臨床症状やおとり仔牛への伝播はなかった。乳牛では、感染による鼻腔排出は見られなかったが、両方のH5N1分離株で壊死性乳房炎や高熱を伴う乳腺の重度の急性感染が観察された。乳汁の産生は急速かつ顕著に減少し、雌牛の健康状態は大きく損なわれた。乳汁中のウイルス量は急速に増加し、109 TCID50(50%培養細胞感染価)/mlでピークに達したが、全身感染は起こらなかった。注目すべきことに、乳腺内でのH5N1 euDGの複製後、ウイルスタンパク質PB2(polymerase basic protein 2)に適応変異E627Kが出現した。我々のデータは、H5N1 B3.13に加えて、他のHPAIV H5N1株も雌牛の乳房内で複製する可能性があること、また、呼吸器からの拡散よりも、乳汁および搾乳作業がウシ間でのH5N1伝播の主な経路である可能性が高いことを示唆している。

