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神経科学:確率論的な神経ペプチドシグナルの競合により満腹感への移行速度が調整される
Nature 637, 8044 doi: 10.1038/s41586-024-08164-8
神経ペプチドは神経の可塑性やスパイク発火、行動において重要な役割を担っている。しかし、覚醒中の脳におけるその時空間的な伝達や統合、働きについては、多くの根本的な疑問が残されている。今回我々は、視床下部室傍核のMC4R発現(PVHMC4R)ニューロンが、神経ペプチドシグナルを統合し、摂食に関連した速いシナプス伝達を調節して、満腹感への移行を調整する仕組みについて調べた。我々は、空腹感を促すAgRPニューロンの軸索は、神経ペプチドNPYを放出して、PVHMC4RニューロンでセカンドメッセンジャーであるcAMPを減少させるのに対して、満腹感を促すPOMCニューロンの軸索は、神経ペプチドαMSHを放出してcAMPを増加させることを明らかにする。それぞれの放出事象は全か無かの確率論的に起こり、直径約100 µmの範囲内の複数のニューロンに影響を及ぼす。放出されたNPYペプチドとαMSHペプチドは競合してcAMPを制御する。つまり、NPYシグナル伝達の大きさと持続性は、摂食状態では高αMSHによって減弱するが、αMSHシグナル伝達は絶食状態では高NPYによって減弱する。摂食はαMSHの放出を増やすのと同時に、NPYの放出を抑えることでこの競合を解消し、その結果、食餌の間中、PVHMC4RニューロンでのcAMP上昇を持続させる。すると、上昇したcAMPは、一口ごとに摂食に関連した興奮性入力の増強を促し、数分間にわたって徐々に満腹感を促進する。我々の知見は、行動状態の移行を誘導するペプチドシグナル統合と情報集積の生化学的様式をはっきりと示している。

