Article

物性物理学:FePS3における臨界近傍のテラヘルツ場誘起準安定磁化

Nature 636, 8043 doi: 10.1038/s41586-024-08226-x

光を用いて量子物質の機能的特性を制御することは、凝縮系物理学の未開拓分野として登場し、超伝導、強誘電性、磁性、電荷密度波など、光に誘起されるさまざまな物質相の発見につながった。しかし、たいていの場合、光誘起相は、光を消した後に超高速時間スケールで平衡状態に戻り、実用には限界がある。今回我々は、高強度テラヘルツパルスを用いて、ファンデルワールス反強磁性体FePS3に2.5ミリ秒より長い非常に長寿命の準安定磁化を誘起した。この準安定状態は、温度が反強磁性転移点に近づくにつれてますます強固になっており、寿命の延びを促すのに臨界秩序パラメータのゆらぎが重要な役割を果たしていることが示唆される。我々は第一原理計算と古典的モンテカルロ計算とスピンダイナミクスシミュレーションを組み合わせることによって、ネール温度付近で有限磁化を伴う基底状態が有利になるようにして特定のフォノンモードの変位が交換結合を変調させることを見いだした。この解析により、支配的な反強磁性秩序の臨界ゆらぎが、この新しい磁性状態の大きさと寿命の両方をいかにして増幅できるかも明確になった。今回の発見は、テラヘルツ光を用いた非熱的経路を通して層状磁性体の磁性基底状態を効率的に操作できることを実証するとともに、準安定な隠れた量子状態を探索する有望な領域として、増強された秩序変数揺らぎを伴う臨界点近傍の領域を確立するものである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度