分子生物学:ポリコーム抑制複合体1によるH2Aユビキチン化の読み取り・書き込み機構
Nature 636, 8043 doi: 10.1038/s41586-024-08183-5
サイレントクロマチン領域のエピジェネティックな遺伝は、胚発生の間の細胞記憶の基盤であるが、DNA複製の際にはヒストンの抑制性修飾の希釈を克服しなければならない。こういった修飾の1つであるヒストンH2Aリシン119のモノユビキチン化(H2AK119Ub)は、サイレントなポリコーム領域を復元するためにポリコーム抑制複合体1(PRC1)E3リガーゼによって再確立される必要がある。しかし、この復元の正確な機構はまだ解明されていない。今回我々は、クライオ電子顕微鏡(クライオEM)と機能的研究を組み合わせて、非カノニカルなPRC1を含むRYBP(ncPRC1RYBP)の読み取り書き込み機構の詳細を明らかにした。この機構はエピジェネティック調節における正のフィードバックループとして働いて、H2AK119Ubの復元にncPRC1RYBPが重要な役割を担っていることを際立たせている。ncPRC1RYBPがH2AK119Ubヌクレオソームに非対称的に結合することが観察され、それを誘導する要因の1つは、RYBPのN末端のジンクフィンガードメインが新生クロマチン上に残ったH2AK119Ubに結合することである。この識別によって、RING1BとBMI1のRINGドメインが修飾されていないヌクレオソーム側に位置することになり、E2酵素を誘引して同じヌクレオソーム内のH2AK119をユビキチン化したり(ヌクレオソーム内読み取り・書き込み)、向かい側のヌクレオソームをユビキチン化したり(ヌクレオソーム間読み取り・書き込み)することが可能になる。これらの知見を総合することにより、エピジェネティック調節の動的な相互作用について、構造および機構に関して重要な手掛かりが得られ、H2AK119Ubを復元して抑制性クロマチンドメインを持続させる上で、ncPRC1RYBPが重要なことが明確になった。

