生物地球化学:中期デボン紀のサンゴ礁におけるサンゴの光共生
Nature 636, 8043 doi: 10.1038/s41586-024-08101-9
イシサンゴ類が、熱帯海洋の貧栄養(低栄養・低生産力)の表層水域で繁栄できる能力は、一般にそれらが光合成を行う渦鞭毛藻類と共生関係にあるためと考えられている。この共生の進化史から、その生物学的・環境的な役割が明らかになる可能性があるが、共生が時間の経過とともに、また、異なるタクソン、形態、海洋環境にわたってどれだけ広く存在したかは、現在のところ不明である。本論文で我々は、中期デボン紀(約3億8500万年前のジベティアン期)のサンゴ礁標本において、サンゴ骨格に含まれる有機物の窒素同位体(15Nと14N)の比(CB-δ15N)を測定した結果を報告する。CB-δ15Nは、サンゴの光共生の進化に対して制約となる値である。群体性の床板サンゴおよび束状(枝状)四放サンゴのCB-δ15N値(2.51 ± 0.97‰)は、それらと共に発見された単体サンゴや(偽)群体性(セリオイド型またはファセロイド型)四放サンゴの値(5.52 ± 1.63‰)を下回っていた。また、堆積物ごとの同位体の差の平均値(3.01 ± 0.58‰)は、現生の共生体を伴わないサンゴと共生体を伴うサンゴの間に見られる差(3.38 ± 1.05‰)と統計的にほぼ同じだった。我々は、この証拠に基づいて、中期デボン紀の床板サンゴや一部の束状(枝状)四放サンゴが活動的な光共生体を伴っていた一方、単体サンゴや一部の(偽)群体性(セリオイド型またはファセロイド型)四放サンゴは共生体を伴っていなかったと推論する。デボン紀の床板サンゴおよび束状四放サンゴのCB-δ15N値が現代の範囲よりも低かったことは、中期デボン紀のサンゴ礁が現代の貧栄養の亜熱帯循環に類似した生物地球化学的環境で形成されたことを示唆している。サンゴの光共生はデボン紀の広範な貧栄養環境によって促進された可能性があり、そうした光共生の存在は、デボン紀のサンゴ礁が顕生代で最も生産力の高いサンゴ礁生態系であった理由の説明になるかもしれない。

