生化学:ヒト複製開始点のライセンス化には複数の機構がある
Nature 636, 8042 doi: 10.1038/s41586-024-08237-8
DNA複製装置の組み立てには、複製ヘリカーゼの装着が不可欠である。真核生物の複製ヘリカーゼモーターであるMCM2–7は、複製開始点認識複合体(ORC)と補助的な装着タンパク質によって、頭部と頭部が結合した二重六量体としてDNA上に置かれ、複製開始点をライセンス化する。複製開始点のライセンス化の機構は出芽酵母で幅広く研究されてきたが、多細胞真核生物でのこの機構はほとんど解明されていない。今回我々は、生化学的再構成と電子顕微鏡を使って、ヒトMCMの装着経路を再構築した。その結果、酵母の場合とは異なり、ORCのORC6サブユニットは、ヒトMCMの装着に不可欠ではないものの、装着を促進することが分かった。電子顕微鏡を使った解析により、ORC6が存在する場合、また存在しない場合のMCM二重六量体形成経路の中間体が複数明らかにされた。その中には、DNAに装着され、環の閉じたMCM 1個を含む六量体があり、この中間体は複数の機構によって成熟して、頭部と頭部が結合した二重六量体になる。ORC6とORC3は、1つ目の六量体の二量体形成界面へORCを誘導して、酵母の場合とは異なるMCM–ORC(MO)複合体の形成を促進し、ORCを2つ目のMCM六量体装着に適した向きにするらしい。さらにMCM二重六量体形成は、別々に装着されたMCMが1つの六量体の二量体化によっても進行する。この二量体化は、ヒトMCM2–7六量体の持つ自己二量体化しやすい性質によって推進される。ヒトMCM装着のこのような融通性が、複製ストレスに対する回復力を細胞にもたらすのかもしれない。この再構成系によって、今後はDNAの複製開始と複製と共役した事象に関する未解決の問題に取り組む研究が可能になるだろう。

