臨床遺伝学:まれな神経発達疾患におけるありふれたバリアントの役割を調べる
Nature 636, 8042 doi: 10.1038/s41586-024-08217-y
まれな神経発達疾患ではメンデル遺伝の要素が大きいが、ありふれた遺伝的バリアントもリスクに関与している。しかし、この多遺伝子リスクが、これらの疾患の患者やその両親にどのように分布しているのか、そして、こうしたリスクがまれなバリアントとどのように相互作用するのかはほとんど分かっていない。また、多遺伝子性の背景が、親から子へ伝達される対立遺伝子を介してリスクに直接影響を与えるかどうか、あるいは、家庭環境を介した間接的な遺伝的効果が役割を果たしているのかどうかについても不明である。今回我々は、まれな神経発達疾患の患者1万1573人と、その両親9128人、2万6869人の対照群の遺伝学的データを用いて、これらの問題に取り組んだ。その結果、ありふれたバリアントがリスクの分散の約10%を説明することが分かった。単一遺伝子性と診断された患者では、そうでない患者に比べて多遺伝子リスクが有意に低く、これは、易罹病性閾値モデルを裏付けている。神経発達疾患の多遺伝子スコアは、直接的な遺伝的影響しか示さなかった。対照的に、教育達成や認知能力の多遺伝子スコアでは、直接的な遺伝的影響は見られないが、両親の伝達されなかった対立遺伝子が子のリスクに相関していた。これは、これらの形質に対する間接的な遺伝的影響あるいは両親の組み合わせ、またはその両方に起因する可能性がある。実際、両親の組み合わせから予想される通り、神経発達疾患のありふれたバリアントによる素因が、まれなバリアントのリスク要素と相関していることが分かった。これらの知見は、今後の研究では、まれな神経発達疾患において間接的な遺伝的影響が果たす可能性のある役割やそうした影響の性質を調べるべきであり、認知機能に関連した表現型を調べる際には、ありふれたバリアントとまれなバリアントの関与を考慮すべきであることを示している。

