工学:犠牲キャピラリーポンプによるマルチスケール生体形状の作製
Nature 636, 8042 doi: 10.1038/s41586-024-08175-5
天然組織はさまざまな細胞や細胞外物質から構成されており、それらが細胞よりも短い長さ(マイクロメートル)から器官スケール(センチメートル)まで、いくつかの長さスケールにわたって配置されることで生物学的機能が調節される。組織作製方法は、例えば光造形法やノズル式バイオプリンティングを通した大型構造物まで、また除去的なフォトアブレーションを通してサブ細胞解像度まで進歩した。しかし、付加的バイオプリンティングはサブノズル/ボクセルの特徴に難点があり、フォトアブレーションは過度の発熱や時間のせいで小体積に限定される。温度に敏感な水系生体ソフトマターを用いた、いくつかの長さスケールにわたる構築が重大な課題として浮上しており、さまざまな内径のマルチスケール血管樹など多くの種類の生体モチーフが、依然として現在の技術では構築できずに残されている。今回我々は、ガリウムを用いた工学的犠牲キャピラリー排出ポンプ(ESCAPE:engineered sacrificial capillary pumps for evacuation)を成形時に用いて、柔らかい天然ヒドロゲル中にマルチスケール構造を作製し、細胞スケール(< 10 μm)の特徴とミリメートルスケールの特徴の両方を実現した。対象の生体材料を形状構築工程から切り離すことで、非生体適合性ツールで最初の形状を作り出すことが可能になった。我々は、例として、約300 μmの細動脈から最小で微小血管(およそ10分の1以下のサイズ)まで、分岐した細胞含有血管樹をコラーゲン中に作製した。同じアプローチで、血管壁の内面を形状的刺激でマイクロパターニングして細胞を3D配向させ、血管奇形などの微細構造を作ることができる。ESCAPE成形は、柔らかい生体材料中にマルチスケール形状物を作製することを可能にし、これまでin vitroで作製不可能であったさまざまな組織構造に向けた道を開くものである。

