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がんゲノミクス:同種造血細胞移植後のクローン動態

Nature 635, 8040 doi: 10.1038/s41586-024-08128-y

同種の造血細胞移植(HCT)では、血液産生を担う幹細胞をドナーの幹細胞に置換する。今回我々は、幹細胞の長期にわたる生着の動態を定量化するために、HLAが適合した同胞間HCTの9~31年後に10組のドナー–レシピエントペアから細胞を採取して、2824の単一細胞由来造血コロニーのゲノムについて塩基配列解読を行った。その結果、より若いドナー(移植時に18~47歳)の場合、5000~3万の幹細胞が生着しており、採取時にも造血に関与していたのに対し、それより年長のドナー(50~66歳)の場合、生着の推定値は10分の1に低下していた。生着した細胞は、骨髄系、Bリンパ球系、Tリンパ球系の集団という複数の細胞系譜に寄与したが、個々のクローンはどれか1つの成熟細胞タイプへの偏りを示すことが多かった。レシピエントは適合ドナーよりもクローンの多様性が低く、これは幹細胞クローンの増殖が最大25倍であったことから生じる、約10~15年分の追加の加齢に相当する。これらの差異は、移植に関連する集団ボトルネックでは説明できなかったが、系統樹によりHCT特異的な選択に2つの異なる様式があることが明らかになった。枝切り選択(pruning selection)では、移植が行われる前にドナーで、レシピエントで豊富に見られるクローン増殖の基盤となる細胞分裂が起こっており、その選択における利点は、選択的な動員、採取、ex vivoでの生存、あるいは最初のホーミングから生じている。生長選択(growth selection)では、クローン増殖の基盤となる細胞分裂が生着後のレシピエントの骨髄で起こり、これは複数のドライバー変異を持つクローンで最も顕著であった。幹細胞を本来の環境から引き離して、別の環境に移植すると、選択圧が過剰になり、ドナーの摂動されていない造血と比べて、クローンの多様性がゆがめられ、多様性の喪失が加速される。

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