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構造生物学:AI2BMDによるタンパク質分子動力学のab initio特性評価
Nature 635, 8040 doi: 10.1038/s41586-024-08127-z
生体分子動力学シミュレーションは生命科学研究での基礎的な技術であり、これが持つ有用性はその精度と効率によって決まる。古典的な分子動力学シミュレーションは時間がかからないが、化学的な精度を欠いている。密度汎関数理論のような量子化学的方法は化学的精度は達成できるが、大きな生体分子に適用できるように調整できない。今回我々は、大きな生体分子の効率的な全原子シミュレーションがab initio精度で可能な、人工知能に基づいたab initio生体分子動力学システム(AI2BMD)について述べる。AI2BMDはタンパク質断片化スキームと機械学習力場を用いて、1万以上の原子からなるタンパク質のエネルギーと力を計算するための一般化可能なab initio精度を達成している。密度汎関数理論と比較すると、これによって数桁の大きさで計算時間が削減される。数百ナノ秒の動力学シミュレーションで、AI2BMDのペプチドとタンパク質のコンホメーション空間を効率よく探索できる能力が示され、核磁気共鳴実験と合致する高精度の3Jカップリングが導出され、タンパク質のフォールディングとアンフォールディングの過程が明らかにされた。さらに、AI2BMDは、タンパク質フォールディングの正確な自由エネルギー計算を容易に行い、推定された熱力学的特性は実験値とよく一致する。AI2BMDは、ウェットラボ実験を補完し、生物活性の動的過程を検出できる可能性があり、現在は行うことが不可能な生物医学研究を可能にする。

