Article
発生生物学:余分なX染色体が男性胎児生殖細胞の発生を損なう仕組み
Nature 635, 8040 doi: 10.1038/s41586-024-08104-6
X連鎖遺伝子の遺伝子量は、胎児生殖細胞(FGC)の発生と共に正確に調節される。ヒトでのX連鎖遺伝子の遺伝子量異常が、FGCの発生を損なう仕組みはほとんど解明されていない。X染色体を余分に1本持つクラインフェルター症候群(KS)患者のFGCは、この問題に取り組むための天然のモデルとなる。今回我々は、KSのヒトFGCのほとんどが早期段階で停止していること、また、多能性、WNT経路、TGF-β経路に関係する遺伝子の発現上昇に加え、FGCの分化に関与する遺伝子の発現低下を特徴とすることを示す。KSでは後期段階に到達できるFGCは限られていて、比較的ナイーブである。KS FGCではX染色体が不活性化されておらず、X連鎖遺伝子の遺伝子量は過剰である。X連鎖遺伝子は、差次的に発現する遺伝子の大部分を占め、KS FGCの発生遅延に関連する重要な生物学的過程に濃縮されている。さらに、KSではセルトリ細胞とFGCの間の異常な相互作用により、後期FGCの基底膜への移動が妨げられる。TGF-β経路の阻害によりKS FGCの分化が改善されることは重要である。我々の知見は、余分なX染色体が男性FGCの発生を損なう仕組みを解明し、KSにおける生殖細胞の喪失に先立つ最初の分子事象を明らかにしている。

