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腫瘍生物学:コリバクチンが起点となる大腸がんにはアドヘシンを介した上皮結合が必要である
Nature 635, 8038 doi: 10.1038/s41586-024-08135-z
大腸がん(CRC)の発生にはさまざまな細菌が関与すると考えられている。その1つであるpks+大腸菌(Escherichia coli)は、宿主の上皮細胞中で特徴的な変異シグネチャーを誘導する遺伝毒性物質コリバクチンを産生する。しかし、非常に不安定なコリバクチン分子が宿主上皮細胞に接近して、害を及ぼすことができる仕組みは明らかにされていない。本研究で我々は、侵襲性CRCの微生物相依存的ZEB2トランスジェニックマウスモデルを用いて、pks+大腸菌の発がん能が、1型繊毛アドヘシンFimHとF9繊毛アドヘシンFmlHによって仲介される宿主上皮細胞への細菌接着に決定的に依存していることを実証する。FimHの薬理学的阻害剤を用いて細菌の接着を妨げると、コリバクチンを介した遺伝毒性とCRC悪化が軽減した。また、FimHの対立遺伝子を入れ替えると、pks+大腸菌の遺伝毒性能に大きな影響があり、プロバイオティック大腸菌Nissle 1917株に遺伝毒性の機能獲得を誘導できることが分かった。アドヘシンを介して上皮に結合することで、宿主上皮細胞に非常に近接した状態で遺伝毒性物質コリバクチンを産生できるようになり、これがDNA損傷を促進してCRC発生を駆動する。これらの知見は、特にCRC発症リスクのあるヒトにおいて、コリバクチンによって誘発されるDNA損傷を軽減して、CRCのイニシエーションとプログレッションを抑制することを目的とした抗接着療法開発のための有望な治療経路を示している。

