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天体核物理学:高温205Tl崩壊で明確になった原始太陽系の205Pb年代測定法

Nature 635, 8038 doi: 10.1038/s41586-024-08130-4

数百万年単位の寿命を持つ放射性原子核は、太陽の形成史と、それが誕生した時と場所で起こった活発な元素合成を明らかにする。最も古い隕石に崩壊の特徴が発見されているそうした原子核の中で、205Pbは重要な核種である。なぜなら、この核種は遅い中性子捕獲(s過程)によってのみ生成され、ほとんどが漸近巨星分枝(AGB)星で合成されるためである。しかし、恒星温度での205Pbと205Tlの弱崩壊速度は非常に不確かであるため、205Pbの存在量の正確な予測はこれまで不可能だった。これらの崩壊速度に制約をかけるために、我々は今回、完全電離した205Tl81+の束縛状態β崩壊を初めて測定した。この特殊な崩壊は、多価イオンでのみ生じる現象である。測定で得られた半減期は過去の理論値よりも4.7倍長く、10%の実験的不確定性はあるものの主要な原子核物理学的限界はなくなった。我々は、実験的に裏付けられた新しい崩壊速度と共に、AGB恒星モデルを使って205Pbの収率を計算した。そして、これらの収率を標準的な銀河化学進化(GCE)に適用して、隕石の205Pb/204Pb比と比較することで、親分子雲内部での太陽物質の孤立時間を決定した。その結果、原始太陽系で見つかった他のs過程の短寿命放射性原子核と一致する正の孤立時間が得られた。この結果は、太陽が誕生した場所が長寿命の巨大な分子雲であったことを改めて示しており、205Pb–205Tl崩壊系が原始太陽系の年代計として有用であることを支持している。

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