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構造生物学:コンセンサス嗅覚受容体が解き明かすにおいの識別基盤

Nature 635, 8038 doi: 10.1038/s41586-024-08126-0

嗅覚系がどのようにして多様な物理化学的性質と分子構造を持つにおい物質を検出し、識別しているのかは、まだ十分に理解されていない。脊椎動物は、Gタンパク質共役型嗅覚受容体(OR)を介してにおいを知覚する。ヒトは、主に2つのクラスから構成されている約400種類のORを持つ。クラスIのORはカルボン酸に適合しているのに対し、ヒトのORの大部分を占めるクラスIIのORは、多様なにおい物質に反応する。嗅覚を理解する上での大きな難問の1つは、ORに対するにおい物質の結合を可視化できないことである。今回我々は、コンセンサス配列を基に設計して作製された人工ORを用いることでにおい物質とORの相互作用の分子特性を明らかにした。これらコンセンサスOR(consOR)は、ヒトORの17の主要なサブファミリーに由来し、自然界に存在するORと配列および構造の相同性が高く、個々のORをモデル化する際の鋳型として汎用性がある。consORは生物化学的に扱いやすいため、特異的なリガンド認識特性を持つ4つのconsORについて、クライオ電子顕微鏡により構造の決定が可能となった。クラスIのconsORであるconsOR51の構造は、天然のヒト受容体OR51E2と高い構造学的類似性を示し、ヒトOR51ファミリーのホモロジーモデルを生成する際の鋳型として有効であることが明らかとなった。3つのクラスIIconsOR構造から、クラスIとクラスIIのOR間でにおい物質結合機構と活性化機構が異なることが明らかになった。このように、consORの構造解明は、ORスーパーファミリーによるにおい物質の分子認識の理解に大きく寄与する。

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