化学:水中での低温活性化による蛍石からのフッ素化学品の合成
Nature 635, 8038 doi: 10.1038/s41586-024-08125-1
危険な化学品であるフッ化水素は、フッ素化学工業の頂点に位置している。しかし、フッ化水素の過酷な条件(300℃以上)での製造とその輸送は重大な危険と関連付けられており、通常は専門家が請け負っている。冷却、電力輸送、農薬、医薬品といった用途向けのフッ素化学品は全て、蛍石(CaF2)から、非常に危険なフッ化水素を発生させる手順を通して合成されている。今回我々は、フッ化水素製造の必要性を回避し、蛍石から直接フッ素化学品を得る温和な方法を報告する。この方法では、アシッドグレードの蛍石(CaF2を97%以上含有)が、Ca2+封鎖に非常に有効なブレンステッド酸であるシュウ酸の存在下で、親フッ素性ルイス酸であるホウ酸(B(OH)3)または二酸化ケイ素(SiO2)で処理される。このスケーラブルなプロセスは、水中で低温(50℃未満)で実施され、これによって、テトラフルオロホウ酸、アルカリ金属フッ化物、フッ化テトラアルキルアンモニウム、フルオロ(ヘテロ)アレーンなど、広く用いられるフッ素化学品の合成が可能になった。B(OH)3を用いた場合、シュウ酸を硫酸で置き換えても同等の結果が得られたが、親フッ素性ルイス酸がSiO2である場合には、この置換はそれほど効果的ではなかった。低純度のメタラジカルグレードの蛍石(metspar)を用いた類似のプロセスも、うまく機能した。蛍石から直接フッ素化学品を製造することで、フッ素化学工業にとって魅力的なモデルである分散型製造の可能性がもたらされる。二酸化炭素捕捉とバイオマスによってシュウ酸を合成する革新的方法への新たな関心、そして硫黄ひいては硫酸を供給するための化石燃料への依存によって課される難題と相まって、今回の技術は、持続可能なフッ素化学工業に向けての出発点となる可能性がある。

