遺伝学:ヒトミトコンドリアゲノムにおける制約の定量化
Nature 635, 8038 doi: 10.1038/s41586-024-08048-x
ミトコンドリアDNA(mtDNA)は、健康や疾患に重要な役割を果たしているが、それはしばしば見落とされる。制約モデルは、選択による集団からの有害変異の除去を定量化するもので、ヒトの表現型の原因となる遺伝的変異を特定するための強力なツールである。しかし、核DNAとmtDNAでは特性が異なるため、核の制約モデルはmtDNAには適用できない。今回我々は、ミトコンドリアゲノムの制約モデルを開発し、それを5万6434人の参加者のmtDNA変異を集めた大規模なデータセットgnomAD(Genome Aggregation Database)に適用した結果を報告する。具体的には、gnomADで観察された変異を中立な条件下で予測される変異と比較することによって制約を解析し、その算出にはmtDNA変異モデルと、観察された最大のヘテロプラスミーレベルのデータを用いた。その結果、予測された変異の大部分が観察されず、これは、多くの有害なmtDNAバリアントが検出されていないことを示唆している。こうした変異の発見を助けるため、全てのミトコンドリアタンパク質、tRNA、rRNAの遺伝子について制約の値を算出したところ、変異に対する幅広い不寛容性が明らかになった。さらに、領域の制約を使って遺伝子内で最も制約の強い領域の特性を明らかにし、局所的な制約を使ってミトコンドリアゲノム全体で最も制約の強い部位を特定したところ、これらの部位に病原性変異が多いことが明らかになった。制約は三次元構造中にもクラスター化しており、そこから、機能的に重要なドメインやそれらと疾患との関連についての手掛かりが得られた。注目すべきは、rRNAや非コード領域も含めて、見落とされやすい部位の制約が見つかったことである。また我々は、これらの制約の指標が、まれな表現型やありふれた表現型の根底にある有害変異の発見を改善できることを実証している。

