Article

神経科学:ドーパミン動態は運動には必須ではないが報酬応答を促進する

Nature 635, 8038 doi: 10.1038/s41586-024-08038-z

ドーパミンシグナル伝達の各モードは、受容体活性化の速度論や空間パターンが異なっている。これらのモードが、どのように運動機能、動機付け、学習に寄与しているかは、長く議論されてきた。今回我々は、活動電位で誘発されるドーパミンの放出は、運動の開始には必須ではないが、報酬指向行動を支えていることを示す。我々は、放出部位オーガナイザータンパク質のRIMをドーパミンニューロン特異的にノックアウトしたマウスを作出し、活動電位誘発性のドーパミン放出を遮断した。このマウスでは、in vivoの速いドーパミン動態が強く障害されたが、基底状態のドーパミンは持続しており、自発的な運動を完全に支えていた。これに対して、レセルピンによるドーパミンの枯渇やドーパミン受容体の抑制は、運動の開始を遮断した。ドーパミン前駆物質であるL-DOPAを投与すると、速いドーパミン動態を回復させることなく、レセルピン誘発性の動作緩慢が解消した。この結果は、速いドーパミン動態は運動開始には必須ではないとする結論を裏付けるものである。自発的運動とは対照的に、ドーパミンニューロン特異的RIMノックアウトマウスでは、報酬指向行動が障害された。場所嗜好条件付け課題や2種のにおいの弁別課題では、このノックアウトマウスは手掛かりの識別を効率よく学習し、報酬を基盤とした学習はRIM欠損後にも持続することが分かった。しかし、達成の意欲は減退していた。確率的な手掛かりと報酬の連合課題では、ドーパミン動態と報酬を期待する舌なめを指標にした条件付け反応は遮断されていた。これらの結果から、活動電位誘発性のドーパミン放出は、運動機能や運動開始の秒未満の精度には必須ではないが、報酬に導かれた行動での動機付けや達成を促していることが実証された。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度