化学:相純粋なχ-Fe5C2による合成ガスから直鎖α-オレフィンへの高効率変換
Nature 635, 8037 doi: 10.1038/s41586-024-08078-5
石油は、長く燃料や化学品を製造するための主要な原料であったが、代替品として、石炭、天然ガス、バイオマスがますます検討されるようになっている。それらの変換では、まず一酸化炭素(CO)と水素(H2)の混合物である合成ガスが生成され、次に合成ガスがフィッシャー・トロプシュ(FT)化学反応を用いてさらに処理される。しかし、燃料製造向けの商業用FT技術は確立されているものの、その技術を用いて有用化学品を合成することは、いまだ困難である。その代表例が直鎖α-オレフィン(LAO)で、LAOは、現在エチレンのオリゴマー化によって得られている重要な化学品中間体である。商業用の高温FTプロセスと、現在開発中のFTによるオレフィン合成プロセス(FT-to-olefin process)は、いずれも合成ガスを直接LAOに変換する。しかし、これらのプロセスではCO2廃ガスも大量に排出されるため、炭素利用効率が低くなる。有用なC5~C10 LAOに最終的に変換される炭素原子の数は、混合生成物の大半を占めるC2~C4オレフィン中の変換炭素原子の数よりも大幅に少ないため、炭素利用効率はさらに低くなる。今回我々は、新規の相純粋χ-炭化鉄を使用することで、こうした合成ガス変換問題を最小限にできることを示す。この炭化鉄触媒は、FTによるLAO合成プロセス向けに個別に調整され最適化されており、FTによるオレフィン合成に特化した触媒が320°C以上で達成可能な活性よりも1~2桁高い活性を290°Cで示すとともに、200時間にわたって安定であり、工業関連条件下で所望のC2~C10 LAOおよび不要なCO2を51%および9%という炭素基準の選択率で生成する。この高い触媒性能は、広い温度範囲(250~320°C)にわたって持続し、この系が実用関連技術の開発に向けて可能性を有することを実証している。

